ぶどう石

定点観測記録

左利きに戻すことにした

私はもともと左利きなのだが、今はほぼ右利きとして生きている。

小学校に上がってすぐ、親が担任の先生に言われたようで右利きに矯正された。毎晩毎晩泣きながら、右手で字を書く特訓を積んだ。初めはどれだけ頑張っても、蛇のようなぐにゃぐにゃした線しか引けず悔しかった。数字の1すらまともに書けない。クラスに左利きは私一人だったので、他の子はやらなくてもいいことをなぜ私だけがやらねばならないのか。子供心に理不尽に思っていた。また、みんなより文字を書けるようになるのが遅かったので、出遅れたとも感じた。負けず嫌いを発揮してすぐに追いついたが。

私は現在26歳なのだが、おそらく矯正することが主流だった最後の世代だと思われる。今でこそ無理な矯正はよくないと言われているが、当時はそうではなかった。しかし、同世代でも矯正されることなくきた人たちもいて、そういう人たちを見るとうらやましかった。彼らは正真正銘の左利きである。でも、私は動作によって利き手が異なるので、利き手を尋ねられてもはっきりと答えることができなかった。歯ブラシ、箸、ギターなどは左である。箸は両方使えたのだが、いつのまにか左しか使えなくなった。小学生の頃は学校では右で持ち、家では左で持っていた。無意識に使い分けていたので、周りと合わせようとしていたのかもしれない。絵を描くときとはさみも両方使えたのだが、こちらは反対に右寄りになってきている。例外として、スプーンはいまだにどちらもしっくりこない。日によって使う手が違う。どちら利きともいえない自分にもやもやしていたのだが、私のように動作によって利き手が異なる人のことを「クロスドミナンス」と呼ぶと大人になってから知った。名前があるとわかってうれしかったし、何より響きがかっこよくないか?これからは堂々と「クロスドミナンスです」と答えようと心に決めた。まだ言う機会は巡ってこないけど。

 クロスドミナンス(cross-dominance)とは、箸は左手で使うが、筆記は右手でおこなうなど、用途によって使い勝手のいい手が違うことを指す。日本語では「交差利き」「分け利き」などと呼ばれることがあるが定着はしておらず、英語でそのまま呼ばれることのほうが多い。

用途によって使いやすい手が違うだけなので、両利きとは異なる。

先天的に左利きであった者が、右利きに矯正されたケースが有名だが、それだけが原因ではない。

 (Wikipedia)

 やはり矯正された人に多いようだ。

こんなにつらつらと書いてしまったが、日常生活では特に支障はない。純粋な左利きの人が遭遇する不便さ*1を感じずに生きている。しかし、ひとつだけ困っていることがあった。とっさに左右の判別ができないのである。

これはずっと疑問だった。一瞬混乱するのだ。子供の頃に「お箸を持つ方が右」と教えられると思うが、自分はそうではないので、えーと、それとは反対だとワンクッション必要だった。大人になった今でも、左右の判別は遅い。視力検査の時はいつも戸惑う。間違えて言い直すこともある。私は少しおかしいのかと思っていた。

ところが、私と似たような人がけっこう存在することを知った。これもやはり矯正された人に多いとのこと。長年の疑問が解決した。よかった。おかしいわけではなかったのだ。ちなみに左右の判別は遅いくせに、左利きの人を見つけるのはやたら速い。実際に会った人でも芸能人でも、勝手に親近感を持つ。ジャニーズの左利き率の高さはなんなのだろう。

これで安心したのだが、新たな疑問がわいてきた。じゃあ、元に戻せば、左右の混乱はましになるのだろうか。左に戻してみたらどうだろう。

すべてをいきなり左に戻すのは難しい。それに、文字は右で書く方が楽なのでこれも変える気はない。そこで、まずは両方いけるが右寄りになっていた「絵を描く」と「はさみ」の2つを左に戻そうと決めた。そして、その他の動作もできるだけ左で行うよう意識するようにした。はさみは左だと切りにくいのではと思われるかもしれないが、案外大丈夫である。むしろ、左利き用のはさみを使ったことがないので、そちらのほうが使えないかもしれない。これは意識さえすれば左でこなせるので問題ない。絵に関しては少し問題があった。左で絵を描くときの私のペンの持ち方は独特なのである。ずっとこの持ち方で描いてきたので、直すのに苦労しそうだと思っていたが、毎日絵を描き続けたところ、たった1週間で正しい持ち方で描けるようになった。まだ描くスピードは遅いが、慣れればなんとかなりそうだ。

左に戻したところでどうなるわけでもないとは思うが、少しずつ器用になっていくのが楽しい。まだ成長できるのだと実感する。A.B.C-Z戸塚祥太さんは、右利きに飽きて左利きにしたそうである。*2これは戸塚さんの数ある奇行のうちのひとつだとされているが、この気持ちはわからないでもない。どちらかばかり使っていたらバランス悪いものね。みなさんもたまには利き手と反対の手を使ってみませんか。

*1:改札とかレ―ドルとか

*2:その後、左にも飽きて、再び右に戻したそうだが