ぶどう石

定点観測記録

それぞれのやめ方

最近、退所や卒業が相次いだ。そこで感じたのは、一口に「やめる」といっても、中身は人によってまったく異なるのだということである。

 

モーニング娘。'16の鈴木香音ちゃんが春ツアーをもって卒業、そして、芸能界から引退すると発表された。私はモーニング娘。のファンになってまだ間もないのだが、道重さん、鞘師ちゃん、そして香音ちゃんと3人もの卒業を経験することになった。いつも笑顔を絶やさず、ふくよかな体型を自らネタにし、ダイエット成功時にはとびっきり美女になって、でもリバウンドしてしまって。常に話題に事欠かない愛されるキャラクターでみんなを和ませてくれた。想像に過ぎないが、私は鞘師ちゃんがもっとも心を許していたのは香音ちゃんではないかと思っている。同期で同い年で、ずっと一緒に歩んできた二人。続けて卒業するのも必然のように感じる。

私は香音ちゃんのよく響く歌声が好きだ。聴いていて気持ちがいい。もう聴けなくなるのかと思うとさびしい。

卒業後は福祉の道へ進むそうで、「似合う!」と思った。香音ちゃんが介護施設で働く姿が容易に想像できる…。明るい性格なので、お年寄りとすぐに打ち解けるだろう。人気の職員さんになっていそう。まだ17歳なのに、自分の進む道をしっかりと考えていて、えらい。でも、正直なところ、もったいないという気持ちもある。福祉の仕事が誰にでもできるとは思わないが、アイドルをできる人のほうがずっと限られているから。アイドルって、おそらくご本人の想像以上に多くの人に幸せを与えている。そんなことができる人は一握りだ。香音ちゃんの笑顔に救われた人がどれだけいることか。特に香音ちゃんは海外のファンが多いので、その影響力はすさまじいと思う。もう少しアイドルでいてほしかった。しかし、彼女が考え抜いて決めたこと。ブログで、自分の思いをファンに向けて丁寧に綴る彼女の誠実さに感動した。本当に優しくて素敵な子だなあと思った。心から応援したい。これから彼女と関わり、その笑顔に触れられるであろう方たちに少し嫉妬しながら。

 

それにひきかえ、退所していくジャニーズJr.はどうだろう。やめたと思ったら、すぐに別の活動を始めたり、ツイッターを始めたり。出てくるのが早すぎる。もうちょっと悲しむ時間と気持ちを整理する時間をくれないか。しばらくは息を潜めておいてほしい。すぐに姿を現されると、悲しんでいたのは何だったんだ、と拍子抜けする。自分が抱いていた想いを踏みにじられたような気分になる。また、彼らが新たな活動を始める際、これまでのファンを当てにしていることが多い。ファンを利用するのではなく、実力で再び這い上がってきてほしいものだ。それなら応援できるのに。これだけネットが普及した時代ではすぐに見つかってしまうので、ひっそりと力をつけることが難しいのかもしれないが。

決して、軽い気持ちでやめるわけではないだろう。いろいろな事情があって、悩んで下した決断にちがいない。懸命に取り組んできたことをやめるのには勇気もいる。だからこそ、やめたあとも誠実であってほしいと望むのは、勝手すぎるだろうか。一度軽率に映ってしまうと、そのイメージを払拭することは難しい。

 

やめ方に正解があるわけではない。どんなやめ方であっても、悲しむ人、残念に思う人、怒る人はいるだろう。ただ、できれば、彼ら彼女らのこれからを応援できる幕引きがいい。

 

今朝、田口くんの退所時期が発表された。残念ながら卒業公演のようなものはないようだが、最後に彼はどんな姿を見せてくれるのだろう。彼のこれからを応援できるのだろうか。今はまだわからない。