ぶどう石

定点観測記録

私の平匡さんはいずこ~28歳婚活体験記~③

さて、お見合い7人目となった。

向こうから申し込んでくださった方である。相手の担当者が私を紹介して、相手がお見合いしたいと申し込んだ場合、こちらに相手のプロフィールが送られてくる。それに対して私がオーケーすれば、お見合い成立となる。前回も書いたが、紹介してもらっても会えるとは限らない。それならば、確実に会ってくれる人を大事にしたほうが得策だと考えるようになった。

お見合い前日になんとかメンタルを持ち直し、楽に臨もうと決めた。期待しすぎず、気負わず。

 

やわらかい雰囲気をまとった人だった。一目で「この人はいいかもしれない」と直感した。プロフィールを拝見したときから、されている仕事が素晴らしいと思っていた。実際に会って詳しく伺ったところ、尊敬の念を抱いた。尊敬できることは、私が結婚相手に望む条件第1位なのだ。そして、話していて楽だった。また、「どんな家庭を築きたいか」という質問をされた。お見合いの場で将来の話をするのは初めてだった。私の答えに対して共感してくれ、価値観も合うと感じた。

別れ際、「よかったらまたお会いできませんか?」と言われた。そんなふうに言われたのは初めてだった。今までは、「本日はありがとうございました」と別れることしかなかったし、それが普通だと思い込んでいた。次につながる言葉が新鮮でうれしかった。「はい。よろしくお願いいたします。」と返事した。その晩、彼から電話がかかってきた。お見合いの後、それぞれの担当者に「再度会いたいか」報告することになっており、双方が会いたいと報告すれば交際成立となる。その後、お互いのフルネームと電話番号が開示される。これまで交際成立した2人はSMSでメッセージを送ってきたので、電話は新鮮だった。次の約束を取り付け、その日は終わった。初めての要素が多く、今までとは違うと心を躍らせた。

 

初めてのデートは食事に行った。やはり楽だった。向こうも「空気感が似ている」と言った。食事のあと、場所を変えてカフェでお茶をした。そこで彼が切り出した。

 

 

「結婚まで考えてもらえますか」

 

 

速え…!!

展開の速さに驚きつつも、特に不満はなかったので承諾した。これ、真剣交際ってやつだよね?普通は3回くらいデートを重ねてから始まるやつよね?

「よかった。じゃあ結婚を前提にお付き合いしましょう」

すごいな、この人。さくさく進めてくれる。気持ちをストレートに伝えてくれるところが安心するし好印象。こうして初回のデートにして、真剣交際へ突入したのであった。

 

それからしばらくは私の都合でなかなか会えなかったのだが、連絡はとっていた。メールの頻度も内容もちょうどよかった。実は、今回のお見合いから縁結びのお守りを持って行った。基本的に神頼みはしないタイプなのだが、あまりの即効性にびびる。すごいぞ平安神宮。7人目だったので、ラッキーセブンでもあった。

 

その後、現在に至るまでお付き合いは続いている。私がいろんなジャンルのオタクであることをカミングアウトしても、まったく引かず、受け入れてくれた。少しずつお互いのことを知っていければいいなと思う。無事に結婚までたどり着けるかどうかはまだわからないが、ぼちぼちやっていく所存である。

 

 

少し話が逸れるが聞いてほしい。

あまり一般的ではないのかもしれないが、私は名字にこだわりがあった。私は自分の名字が割と好きなので、言い方は悪いが、ありふれた名字や珍名過ぎる名字に変わることに抵抗がある。

選択的夫婦別姓が早く導入されてほしい。自分のアイデンティティがゆらぐ、キャリアに響くという理由ではなく、単に好きな名字を選びたいだけである。自分と相手の名字を比べて好きなほうを選べたらいいと思う。いっそトレードもありなんじゃないか。しかし、相手に自分の名字に合わせてほしいとまでは思わない。だから、別姓が認められていない現状では、夫の姓を名乗るつもりでいる。「私の名字にしてくれ」と主張することで、面倒な奴だと思われるのが面倒なので。ここで闘うような人が社会を変えていく人なのだろうけど、残念ながらそこまでのガッツは持ち合わせていない。別姓にするために事実婚を選ぶという方法もあるが、現在の日本においてはまだ法律婚の方がメリットがありそうなので選ばないだろう。なんだかんだ多数派に流れるところが、自分も日本人なのだと少々悲しい。でも、夫の姓にすることが当たり前とされている風潮はよくないと思っている。男性は自分の名字が変わるということを想定していないから、別姓の議論が進まないのだろうか。ちょっと考えてみてほしい。今日から名字が変わります、ってけっこう大きなことだと思うのだが。親が離婚したり再婚したりして名字が変わったことがある人なら、もっと別の視点があるかもしれない。

そんなふうに名字は重要な要素だったのだが、彼の名字は好みだった。この点でもクリアした。余談だが、友人と「かっこいい名字は何か」と議論したことがあり、「桐生」と「二階堂」がツートップということで話がまとまった。

 

何もせずとも出会いがあり、結婚できるならそれにこしたことはない。しかし、出会いがなければ出向くしかない。結婚相談所はお金がかかるので安易におすすめはできないが、一つの選択肢として考えてみる価値は十分ある。私は使ってよかったと思っている。もともと私は結婚願望が強い方ではなく、「いつかできたらいいな」くらいにしか考えていなかったのだが、一人暮らしが長くなり、一人の生活に飽きてきたので結婚を考え始めた。そして、いざ飛び込んでみると、不思議とその気になるもので、入会してから結婚したい気持ちが強くなった。何事も形から入ることは有効である。

いろいろな経験をし、いろいろなことを考えた濃い数か月間であった。 

ひとまず完結。